とにかく最近はあの三人で集る事が多い
もっぱら話の中身は飛空挺の事だ。





effect




「ヴァン、パンネロねぇ見て!!」

ブリッジに入って来るなり満面の笑みで二人の名前を呼んでいる
実に楽しそうに話をしているのが気になって仕方ない

「どうしたんだよこれ」

「前、本で見たやつだよね」

「実はさっき買物行ったついでにショップに行ったの」

「でも・・これ高いよね?」


金持ってないだろ。もしかして盗んだのか?」

「ヴァンと一緒にしないの」

「教えて欲しい?」




興味津々に身を乗り出す二人を前に悪戯心が芽生えてしまい
机に寄りかかり頬杖を付ついてゆっくり喋りだす

「か・ら・だ・ヨ」

ブリッジにいるのだから確実に
バルフレアとフランにも聞こえている筈だろう。

目の前の二人はそれとなく顔が赤いし、
遠くからはワザとらしくむせる声

「おいおいそこら辺でやめとけよ」

フランは見透かしたようにクスリと笑い余計話を盛り立てる

「あら、バルフレアは何が言いたいのかしら」


ヴァンとパンネロ両方の顔を見て人差し指を立てる

「つまりお店の手伝いをして足りないお金ををまかなったの」


「そ、そんな事言わなくたって分かってるって!」
余計に顔を赤らめ二人で反発してきてしまった

「ゴメンゴメンこれあげるから許して、ね」

「そーじゃない、それにが買ったやつだろ。だったら」

「未来の空賊にプレゼント。飛空挺手に入れたら乗せてね」



「・・・・・・・・サンキュー」

そう言って部品を手渡すと照れ隠しか鼻を掻く仕草を見せて
パンネロと一緒にどこかに出かけてしまった。
ちょっと茶化しすぎたかもしれない。


「あんまり弄ぶなよ」

「二人も話に乗ったじゃない、同罪」

「それもそうね」

「でしょ。それにあの二人だからいいのよ。アーシェなら本気で怒るんだもの」

「やった事あるのか・・」

「まぁね。―・・・さて、、、部屋に戻って寝よ。」

「後で起こしに行ってやるか?」

「んー、わかんないからいいよ。起きれたら食事に行くわ」

は小さく欠伸をしてからブリッジを出て行った。



何だかそんな気はしていた。
体の動きが鈍い感じはあるし体温が高いせいか日中は暑くて。

部屋に戻りシャワーを浴びて気分的にはスッキリするがどうにも増してきた。

「どうして女だけなのかしら・・・・・」

いくら考えても答えなど出るわけも無い問を呟くようになってはもはや動く気力すら失う。
まだ濡れている頭にバスタオルをかぶせ、ぐったりとソファーに腰掛ける。


「はぁ・・・」

背もたれに頭を乗せて上を向けば天井が見える。
ゆっくり目を瞑って深呼吸をすれば今にも眠りに落ちそうだ。

点けていた電気が閉じた瞼から光を通す。
消したくても動けない。動きたくない。

仕方なく頭にかけているタオルを目の上にのせて遮断しようかと思った所に来客がドアを叩く。

居ない事にしたいが、生憎ライトがついている。
返事をするがどうにもテンポが遅くなってしまう。


「・・・・はい」

「俺だ、入ってもいいか」

「、、、いるの私だけよ?」

だけなら尚いいさ」

「でも今の私よくないのよ。いてもつまらないわ」

「そうか、なら入るぞ」


遠まわしに拒絶したのにそれを知ってバルフレアは部屋に入ってきた。


「具合、良くないみたいだな」

「、、ええ。」

「これ持ってきたから飲めそうなら飲めよ」

「何?あったかいの?」

「冷たいほうが良かったか?」

「ううん。ホットでいい」

「そうか」

零さないようにとバルフレアはソファーに腰掛けてから気だるそうな様子の
そっと持ってきた飲み物を手渡してやる。

「ありがと」

「いいさ」

バルフレアはいつもの笑顔を見せの顔を見つめた。

「・・・何?」

「青白くはないな」

「お風呂にも入ったからね。」

「髪、濡れたままかよ」

「今はちょっと無理なのよ」

「俺が拭いてやる」

「いいよ、ほっとけば乾くし」

「髪が痛むだろ」

持っていたコップを取り上げられバルフレアに背を向けるように言われた。
なすがままの状態で優しく髪をタオルで拭いてもらっている。

「悪い気がするのよ。」

「何がだよ」

「だってあの空賊バルフレアに髪を拭いてもらってるなんて。気が引けるの」

「光栄なことだろ」

「まぁそうだけど、落ち着かなくて」

「それは俺からそんなに離れて後ろに頭を倒してるからだろ?」

「離れてないと拭けないでしょ」

「警戒してるのか」

「違うわ。遠慮してるの。バルフレアは―」

「うだうだ言ってないで、いいから来い」

「な、何するのよ!!」

タオルを頭にかぶせられ彼の両腕がの腹部に回される。
引き寄せられるようにしてバルフレアの胸に納まってしまったのだ。

「こうしてるほうがあったかいだろ?」

「・・・・・・・・・・・・」

「何だ、怒ってるのか」

「拭く気ないでしょ」

「あるさ、いいからお前は寝てろ」

「こんな状況で無理に決まってるじゃない」

「案外寝れるもんさ。それに髪を触られたら落ち着くだろ」

「あなたが言うと説得力があるわ」

「そういう事じゃない。辛いんだろ」

「察しがいいのも考え物ね、あなたの場合は」

「悪い事じゃないさ」

「・・・そう、かしら。」

「ああ、悪くない」

「お節介好きね。・・・なら、少し私もその恩恵に預かる事にする・・・」

「そうしとけ、素直な方が可愛げがある」

「じゃあ、嫌」



「可愛くないでしょ?そういうことよ。」

バルフレアは小さく笑い髪の毛にそっと唇をつける―



「分かってるから尚更、可愛いって言ったんだよ」



その言葉に絶句し逃げようとする

だがその腕から逃れる事が出来ないのは体のせいか、それとも言葉のせいか―